「どこにでもいる人はどこにもいない。」(ヌスクァム エスト クィー ウビクェ エスト)
ローマの哲人セネカ(紀元前4年~紀元64年)の言葉です。あれこれ手を付けて一つのことに集中できないことを戒めた言葉とのこと。面白い表現だと思います。そして私にとっては耳が痛いです。
セネカはまた、世俗事にまみれる”多忙”をしばしば批判します。地位や名誉のためにあくせくすることは、セネカに言わせれば、時間の浪費であるとのこと。(セネカはとにかく厳しいです。)”どこにでもいる人”とは、そういう八方美人的なあり方をさすのかもしれません。
多様な価値観の中で迷い、浮ついている時、日本語でも”地に足がついていない”と言ったりしますが、それはまさに、”どこにもいない”という感覚だと思います。日々どんなときも、”わたしはここにいる”と感じながら丁寧にものごとに取り組みたいものだと思います。
(語釈)
- nusquam:副詞「どこにも~ない」
- est:(いる、存在する)sum の 直説法・能動態・現在 3人称単数
- qui:関係代名詞「~ところの人は」
- ubique:副詞「どこにでも」
- est:(いる、存在する)sum の 直説法・能動態・現在 3人称単数